Blood of Devil -4-

此処が何処なのか、西暦はいつなのか、何が起こっているのか、この街は何なのか、現在の国の状況は。
聞きたいことをすべて尋ね、答えを得たは茫然とした。
――第三次世界大戦
これは今までいた世界の未来なのだろうか、それともそれより以前、になる以前の世界の未来なのだろうか。
調べようにも孤立しきったトシマでは、人脈も何もないに術はない。
滅びなかったことが不思議な日本は、その小さな列島を二分されている。
――沖縄や北海道はどうなっているんだろう
どうでもいいとわかっていながらも、現実逃避のように思い浮かべる。
やはり二分された陣営に入っているのだろうか、それとも他の国に占領されたのだろうか。
どちらもありえることだと、は過去のこの国を思い返す。
すいっと、視線をシキと名乗った男にやる。
赤い瞳は疑念と殺意に濡れている。
黒づくめに、至る所についた銀のアクセサリー。
思わずダンテを思い浮かべかけて、はため息を吐いた。
「……本当に、日本人なのか?」
「くどいぞ貴様」
形のよい眉が忌々しげに歪められる。
何度も確かめているのでうっとおしがられているのは彼女もわかっている。
だが、信じたくないのだ。
例え魂だけとはいえ、このがっかり美形と同じ人種なのだと。
別の世界でも国籍は変わらない。
美麗な顔を、それだけに残念だと思いながらはまじまじと眺める。
苛立たしげに伏せられた睫毛がやけに長かった。
「マスカラ……」
思わず手を伸ばす。
顔に触れる前に黒い手袋に包まれた手に叩き落とされた。
「何がしたい」
「何処のマスカラを使っているのかと思って」
「……」
先程までとは打って変わって、気味の悪いものを見るような瞳を向けられる。
だがは気にしない。
彼女もまた一人の美を求める女性だった。
「メーカー、同じのあるかなぁ。何せ世界が違うからなぁ」
ぶつぶつと呟きながら薄氷色の瞳が見据えているのは睫毛である。
かつて、こんなに熱心に睫毛を見られたことがあったろうか。
もちろんない、あるわけがない。
シキは理解しがたい恐怖に身を慄かせた。
もう一度伸ばされた腕を、今度は叩き落とすこともできず、異様なまでに真剣なに日焼け止めやマスカラ、果ては基礎化粧品や洗顔料の類まで、先程よりも厳しく問いただされるとことなった。