I want you !!

ダンテとは突如現れた男に謎の塔へと招待された。
次々に現れる悪魔たちに鉛玉と切っ先のプレゼントを贈り、住み慣れた町から怪しい塔へと足を向ける。
あまり趣味のいいパーティではないと退屈そうなは、雑魚を相手に楽しそうに踊る弟を横目で見ながら飛びかかってくる悪魔を切り捨てた。
ひび割れた地面や瓦礫の山を物ともせず、双子は進んでゆく。
「ここか……」
塔の中へと二人が足を踏み入れると、途端に冷え切った空気が体を包みこんだ。
半魔である二人にはどうということのない寒さだが、人間が長時間放置されれば確実に凍死するだろう。
壁は凍りつき氷柱が垂れている部屋の中、氷漬けの彫像が割れる。
二人の視線の向かう先で、鎖に繋がれた獣は身を震わせ、二人に向けて氷の塊を吐きだした。
それぞれの獲物で向かってくる塊を地に叩き伏せると、黒い獣は雄々しく吠えた。
『立ち去れ人間!』
三つの首を持った黒く巨大な獣は、凍てつく息を吐きながら人の言葉で吠える。
はその巨体を見上げ、冥府の門を見張るという三つ首の獣―ケルベロス―は神話だけでなく魔界に実在するものなのかと妙に感心をしていた。
『此処は禁じられし魔の領域! 力なき者に立ち入る資格などない!!』
悪魔の割には律儀な性格だ。
人間とあなどっているならばすぐに氷漬けにでもしてしまえばいいものを、わざわざ忠告までしている。
上級の悪魔なのだろうが、それにしても人間に甘い。
「こりゃ珍しい、おしゃべりワンちゃんか」
ダンテがからかう様に笑う。
やはり弟もこの悪魔を犬という認識をしているらしい。
「ワンちゃんコンクールに出てみたら? 優勝間違いなしだろうぜ」
からかうというよりは、この悪魔を挑発して楽しんでいるようだ。
仕方のない奴だと思いながらもは口を挟まない。
『愚弄する気か、人間風情が!』
あっさり挑発に乗ってしまう悪魔もどうかと思うが、どうやら本気でプライドを傷付けられたらしい。
低くなった声に含まれる感情がありありと見える。
口は少々悪いようだが、それも飼い主の躾次第だろう。
吐き出された息で後ろの扉が凍りつく。
能力的にも申し分ない。
強ければ強いほど、悪魔が頻繁に訪れるような事務所に置くには適している。
普通の動物では命の危険がある店だが、悪魔ならば問題ないだろう。
元来動物好きのは、殺伐としたスラムの暮らしの中で、生活に余裕の生じた今、癒しに飢えていた。
それこそ、悪魔を飼い慣らそうと考える程度には。
「丁度いい、犬が欲しいと思っていたんだ」
にいと、笑うの顔はあくまでも本気で、凍った地面に叩きつけられるピンヒールの音にダンテは顔を顰めた。
「おいおい、マジでこんなでかいの飼うつもりか? 俺は反対だぜ」
宥める様に姉の肩を叩くと、彼女はふっと嗤う。
「相手は悪魔だ、体のサイズぐらいはどうにでもなる」
夏は重宝しそうだしなと、楽しそうにつぶやくの手は既に閻魔刀の柄にかかっている。
何を言っても無駄だと悟ったダンテは肩をすくめ、次の瞬間には二挺の愛銃を構えた。
「仕方ねぇな」
進むためにはどうせ倒さなければいけない存在なのだ。
塔の中の悪魔は殲滅するつもりでもあるし、姉が一体ぐらい持ち帰っても支障はないだろう。
結局のところ、姉には逆らえないのだ。
『後悔するぞ貴様ら!!』
怒りに震え殺意に満ちた言葉をぶつけられて尚、双子の半魔は美しく笑った。
「たっぷり躾けてやろう」
「Show Timeってやつだ……来いよ!」
ケルベロスが吠えると同時に二人は駈け出した。